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視察等レポート

がん検診精度管理と千葉県の現状について(2015.01)

はじめに

がん対策の基本は、がんの罹患率・死亡率を減少させることにより、国民の疾病負担を軽減することであり、この目標に到達するために、予防・診断・治療・緩和ケアなどさまざまな対策がとられています。

がん検診は、適切な実施により確実な効果が得られることから、がん対策の中でも特に重要な役割を担っていますが、わが国におけるがん検診の精度管理の現状は未だ十分とは言えません。精度管理の向上には、目標と標準の設定、質と達成度のモニタリング・分析、改善に向けた取り組みの3段階がありますが、わが国におけるがん検診を推進するためには、この3段階における関係者である、国、都道府県、市区町村の役割を明確化し、その役割を担う必要があると言えます。


1 がん検診の3本柱

がん対策基本法にも定められているように、がん検診の実施には、がん検診の方法等を検討し、正しく行われるための、がん検診の事業評価、いわゆる精度管理を実施するとともに、がん検診の受診率の向上を図ることが必要となります。

がん検診の方法等の検討とは、がん検診の根拠となる研究を科学的に検証し、ガイドラインを作成することであり、がん検診アセスメントと呼ばれるものです。例えば、高精度の検査はがんを早期に見つけられるものもあるものの、死亡原因とならない前がん病変等も発見するため、がん死亡率の減少には繋がらないというマイナス面も指摘されています。がん検診を行うことで、がん死亡率が確実に減少しているかどうかについて、わが国におけるがん検診としてどのような方法が妥当であるかを検証、判断するがん検診アセスメントが1本目の柱です。

2本目の柱が、がん検診の精度管理です。これは、科学的根拠のあるがん検診の精度を改善、維持し、正しく行うための支援を行うものです。有効性の確立したがん検診であっても、正しく実施しないことには真の成果を発揮することはできません。そのためにも、現状のがん検診が正しく行われているかどうかを検証しながら、不備な点を改善していかなければならず、また、がん検診を行う検査についても、がん検診がシステムとして適切に運用されているかどうかを検証しながら改善を進める必要があり、がん検診マネジメントとも呼ばれます。

最後の3本目の柱ががん検診受診率であり、有効ながん検診をより多くの人が受診するための受診率対策を推進していくものです。有効性の確立したがん検診を正しく実施しても、多くの人々が受診しないことにはがん死亡率の減少は達成できません。受診者にがん検診の正しい知識を知ってもらい、検診の必要性を喚起し、継続して受診してもらえる環境づくりが求められます。


2 がん検診精度管理における関係機関の役割

がん検診の3本柱のうちがん検診マネジメントについては、先ほども述べた平成20年の厚生労働省の報告において、事業評価の手法すなわち国・都道府県・市町村等の役割が示されています。

がん検診の事業評価は、高度な専門的知見が必要とされることから、国が定める技術的な指針に基づき、専門家により構成される都道府県の「生活習慣病検診管理指導協議会」が主導的な役割を担うとともに、個々の市町村に対しては、専門職等の資源を有する保健所が個別具体的な技術的支援を行うとしたものです。

例えば、都道府県の役割としては、「生活習慣病検診管理指導協議会を設置し、がんの罹患動向、検診の実施方法や精度管理のあり方等について検討を行い、市町村や検診実施機関への指導を行うこと」、「各市町村の、がん検診受診率※、要精検率、精検受診率、陽性反応的中度、がん発見率(※)等の指標を把握し、各指標についての全国数値との比較、市町村ごとの検討、検診実施機関間でのばらつきがないかの検証を行うこと」とされ、さらに、「市町村や検診機関の間で大きなばらつきが生じている場合には、その問題の所在を明らかにすること」、「精度管理上の問題がある検診実施機関を、検診機関として認めないとする措置を講じること」「住民自ら受けるがん検診の質を判断できるように、生活習慣病検診管理指導協議会での検討結果を、ホームページ上に掲載する等の方法により積極的に公表すること」などが挙げられています。

がん検診受診率…対象集団のうち、スクリーニング検査を受診した者の割合

要精検率…がん検診受診者のうち、精密検査が必要と判断された者の割合

精検受診率…要精検者のうち、精密検査を受けた割合

陽性反応適中度…要精検者のうち、がんが発見された割合

がん発見率…がん検診受診者のうち、がんが発見された割合


3 千葉県におけるがん検診精度管理の現状

がん検診精度管理の状況

千葉県では、県がん対策審議会の中に設置された「予防・早期発見部会」が、生活習慣病検診管理指導協議会の役割・機能を担い、平成20年の厚生労働省の報告書で示された、技術的・体制的指標、いわゆる「チェックリスト」により、各市町村が実施するがん検診について評価することとなっています。

しかし、チェックリストによる評価については、がん種により36~40の項目の質問について、実施の有無を○×方式で回答したものにすぎません。例えば、各市町村のがん検診受診率、要精検率、精検受診率、陽性反応的中度、がん発見率については、千葉県が各市町村の数値を比較評価したり、検診機関ごとのばらつきの有無を検討したりするのではなく、各市町村が「自分のところ」の、がん検診受診率、要精検率、精検受診率、陽性反応的中度、がん発見率を把握できているか否かを○×で評価しているにとどまっているのです。これでは、全国数値との比較や市町村、検診実施機関ごとの検証ができるはずもなく、がん検診の精度を改善、維持し、正しく行うための支援を行うとする、がん検診マネジメントとは程遠い現状にあると言わざるをえません。

それでは、なぜ、千葉県で市町村ごとのがん検診の適切評価が進まないのか。

さきほど述べたチェックリストは、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんのそれぞれについて、都道府県用、市町村用、検診実施機関用の3種類が作られています。

例えば、胃がん検診のための市町村用チェックリストは多岐に渡っていますが、これらが各市町村で十分統一されていないため、数値の比較にまで至らないというのが千葉県の言い分のようです。

また、例えば、受診率算定の対象年齢は、がん対策推進基本計画の中に40~69歳とうたわれているにもかかわらず、昨年度、厚生労働省が実施した調査によれば、上限なく算定している市町村が86.1%に上り、国の指針にしたがって算定している市町村はわずか5.2%にとどまっていたり、年度内に精検受診できなかった場合のカウントがあいまいであったりする等の問題も、市町村ごとのがん検診評価が進まない要因として指摘されています。


おわりに

がん対策の基本であるがんの罹患率・死亡率の減少のためにはがん検診が有効ですが、わが国におけるがん検診の精度管理が十分行われていないとの指摘がなされてきました。

現に千葉県では、各市町村のがん検診受診率、要精検率、精検受診率、陽性反応的中度、がん発見率等のチェックリストについて、実施の有無を把握するにとどまっており、がん検診の精度を改善、維持し、正しく行うための支援を行うとする、がん検診マネジメントとは程遠い現状にあることがわかっています。がん検診の精度管理が進まないのは千葉県に限ったことではありませんが、一方で数値での精度管理と検討結果の公表が行われている大阪府などのケースもあり、都道府県格差が生じていることは間違いありません。

千葉県では、県がん対策審議会の中に設置された「予防・早期発見部会」が、各市町村のがん検診評価を行うこととなっていますが、その審議、検討に多くの時間を要しているところです。数値での精度管理と検討結果の公表を一刻も早く実現し、県内がん罹患率・死亡率の減少に繋がることが望まれます。

参考文献・資料
  • 国立がん研究センターHP(閲覧日2014.12.07)  がん情報サービス 「がん検診について」
  • 厚生労働省HP(閲覧日2014.12.07) がん検討あり方検討会資料「チェックリストの改定について」
  • 厚生労働省HP(閲覧日2014.12.07) 「第10回がん検診のあり方に関する検討会議事録(2014年11月13日)」
  • 千葉県HP(閲覧日2014.12.07)「平成25年度第1・2回予防・早期発見部会開催結果」

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