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視察等レポート

鉄道利用者の運賃認可過程への参画についての考察(2014.1)

平成25年度に早稲田大学公共経営大学院において行った研究について、その結果を以下にご報告いたします。(抜粋)


国の審議会等における議事録の公表状況

1.1 研究の目的

公共料金分野の財、サービスは、生活の基礎をなす必需的なものが多く、国民生活に大きく影響するとともに、生産の重要な要素としてわが国産業の国際競争力と密接に関わるものである。このため、公共料金の低廉化は、国民が生活の豊かさを実感できるようにする上で欠かせないものであり、わが国の高コスト構造を是正する上でも極めて重要な課題と言える。

ところで、北総鉄道北総線の沿線住民が、同事業者に対して割高な運賃の値下げなどを命じるよう国に求めた、平成25年3月の北総鉄道運賃事件東京地裁判決は、原告5名全員に原告適格を認めるとともに、運輸審議会一般規則第5条第6号に規定する利害関係人についても、従前の国土交通省の見解と異なり、利用者が含まれるものと解するのが相当であるとする画期的なものとなった。

そもそも公共料金に対して価格規制が必要とされるのは、自然独占性の要因から参入規制がある場合に、事業者が独占的、恣意的な価格設定を行い、超過利潤を得るのを防止するためである。競争が機能することにより、超過利潤発生等の弊害が回避されるならば価格規制を存続させる必要はないが、公共料金分野の中でも線路等の敷設が必要な鉄道事業は参入障壁が高く、参入規制の緩和、撤廃等、競争条件の整備による料金低廉化の実現は難しい。

利用者の負担能力に鑑みた適正な鉄道運賃の実現を図るため、他にも、公共料金の価格設定方式に明示的な事業効率化インセンティブを盛り込むこと、利用者のチェック機能を働かせるために情報公開を推進することがその方策として挙げられる。前者については、平成8年より総括原価方式の下での上限価格制を導入したり、ヤードスティック方式を強化したりする等、「新しい旅客鉄道運賃制度」による改革が進められており、その成果が注目されるところである。本研究は、北総鉄道運賃事件東京地裁判決を鉄道運賃認可過程への利用者参画を実現する契機になるべきものと捉え、後者の情報公開について、利用者の運賃認可過程への参画、利用者への情報開示の現状を明らかにした上で、政策提言を行うものである。


2.運賃認可過程における問題点(主なもの)

1 「軽微な事案」について
国土交通大臣が鉄道旅客運賃の上限の認可や変更の命令等を行う場合には、運輸審議会に諮らなければならないことになっているが、同審議会が軽微であると認めた事案(「軽微な事案」)については、運輸審議会に諮問せず決定することになっている。しかし、運輸審議会での審議が省略されることは、公聴会も開かれず、利用者の参画が妨げられることになることはもちろん、運輸審議会関係資料による情報公開も行われず、認可の判断の透明性、公平性が担保されないこととなる大きな問題である。
ところで、平成10年に羽田空港駅開業に伴い京浜急行電鉄が行った旅客運賃申請では、同社の旅客運賃表によれば230円となるところ、特別加算運賃170円を足した400円として申請を行い、運輸審議会はこの運賃認可申請を「軽微な事案」として認定したため、運輸審議会での諮問を経ることなく認可されている。しかし、当該路線の利用者数は開業からの15年間でのべ3億5千万人、1日あたり約64,000人であり、平成24年度末までの加算運賃収入は累計で約507億円に上り、その影響は極めて大きいものであったと言える。
昭和25~28年頃に年間1000件前後、昭和30年代に年間300~500件程あった運輸審議会の審議答申件数が、平成12年以降は年間10件程度と大幅に減少していることは、審議省略する必要性を失わせるものである。多くの国民に関係する重要な公共料金の決定である以上、「軽微な事案」として審議省略を見直し、運賃認可過程への利用者参画の道を広げるべきである。
2 運輸審議会公聴会における「利害関係人」について
運輸審議会一般規則第1条(公聴会主義の原則)は、「運輸審議会は、事案に関し、できる限り公聴会を開き、公平且つ合理的な決定をしなければならない」と規定され、運輸審議会においては、この公聴会主義の原則に則ってできる限りの開催に努めることとなっている。また、国土交通省設置法第23条(公聴会)は「運輸審議会は、第15条第1項に規定する事項及び同条第2項の規定により付議された事項については、必要があると認めるときは、公聴会を開くことができ、又は国土交通大臣の指示若しくは運輸審議会の定める利害関係人の請求があったときは、公聴会を開かなければならない」としている。
すなわち、公聴会が開催されるのは、(1)運輸審議会の職権により決定した場合(職権開催)、(2)国土交通大臣の指示があった場合、(3)利害関係人の申請があった場合の3つに分けられるが、利用者の参画という観点から言えば、当該鉄道利用者が公聴会の開催を請求することが可能か否かが大きな問題となる。
運輸審議会一般規則第5条各号には、公聴会開催を求めることができる利害関係人として、鉄道利用者は明記されておらず、同条第6号の「運輸審議会が当該事案に関し特に重大な利害関係を有すると認める者」についても、国土交通省は、「法的保護に値するような財産上または身分上の権利が侵害され、もしくは侵害されるおそれのある者」が該当するとし、ここに利用者は含まれるものではないとの立場をとっている。したがって、鉄道利用者は公聴会の開催を申請することはできないのである。
公聴会は、運賃認可過程において利用者が意見を表明することができる唯一の場であるにもかかわらず、利用者が利害関係人とみなされないためにその開催を要求することができないことは、利用者の鉄道運賃へのチェック機能を妨げる大きな課題であり、運輸審議会一般規則第5条の規定を改正する必要がある。
3 運輸審議会の議事録公開について
国の審議会等については、平成11年4月に閣議決定された「審議会等の整理合理化に関する基本計画」により、審議会等の委員氏名等の公表はもとより、会議又は議事録も速やかに公表することが原則とされ、インターネット上のホームページへの掲載も努めることとされている。
しかし、運輸審議会の情報公開に関しては、従前から「審議会委員の氏名等」、「審議会議事概要」が、平成25年10月の「宮城県からの仙台塩釜港に係る港湾区域の変更同意申請」についてからは、「審議会配布資料」がインターネット上の国土交通省ホームページで開示されているものの、「審議会議事録」についてはホームページに掲載されていない。
そこで、過去の審議会議事録についてその情報が公開されるのかを検証するため、平成25年10月9日に「平成21年12月17日付けで諮問があった、京成電鉄株式会社からの鉄道旅客運賃の上限認可申請に係る審議会議事録、配布資料、平成22年1月26日及び28日に行われた公聴会の会議録、平成22年2月2日及び4日に行われた参考人への意見聴取記録」をはじめとする3件についての行政文書開示請求を行った。
開示された運輸審議会議事録には、審議会に出席した委員氏名、事案処理職員氏名、関係者氏名は明らかにされているものの、審議会において意見、質疑を行った者は「委員」、「関係者」等と記載され、誰の意見、質疑であったのかが不明であった。そもそも、議事録とされているものは「主な意見及び質疑等」であり、出席者の意見、質疑等の全てが記載されているかどうか明らかでない。例えば、平成22年1月14日に開催された第4回運輸審議会議事録は以下のようなものであった。

(平成21年12月17日付けで諮問があった、京成電鉄株式会社からの鉄道旅客運賃の上限認可申請に係る審議会議事録)


第4回運輸審議会(平成22年1月14日)

事務処理職員からの説明聴取後一般公述人の選定及び進行予定について検討を行った。一般公述人の選定については原案通り応募者全員(28人)を一般公述人として選定することとした。また、進行予定については、一般公述人の公述順に関し、賛成・反対、居住地、職業等を考慮してバランスよく公述順を決定するのがよい等との指摘があり、これを踏まえて原案を一部修正した。


すなわち、これらの行政文書は、誰の意見、質疑であったのかが不明であることはもとより、具体的にどのような議論が行われたのかもうかがい知ることはできない。したがって、開示された行政文書は単なる「議事メモ」に過ぎず、議事録が公開されたと言えるものではない。

このように運輸審議会議事録の詳細が開示されないということは、審議過程で公聴会での公述がどのように反映されたのかが明らかにならないことになる。たとえ鉄道利用者が審議過程に参画し、意見を述べられたとしても、それが審議に生かされなければ無意味に等しい 。鉄道利用者が有する利益を保護するため、利害関係人としての鉄道利用者が運輸審議会への参画する際の前提条件として、運輸審議会議事録全文を始めとする議事内容が、誰もが容易にアクセスできる形で公開されていることが必要である。

3.政策提言

1 運輸審議会規則第5条第6号について
国土交通省は、運輸審議会規則第5条を変更し、当該鉄道を反復継続して日常的に利用する者を「利害関係人」に加えるべきである。
鉄道運賃審議を行う運輸審議会は、運輸審議会一般規則第1条に明示する公聴会主義の原則に則って、できる限りの公聴会開催に努めることとなっているが、国土交通省設置法第23条に定める公聴会開催を求めることができる利害関係人について、運輸審議会規則第5条各号に鉄道利用者は明記されておらず、また、同条第6号の「運輸審議会が当該事案に関し特に重大な利害関係を有すると認める者」についても、国土交通省は、利用者は含まれないとの立場をとってきた。公聴会は、運賃認可過程において利用者が意見を表明することができる唯一の場であるにも関わらず、利用者が利害関係人とみなされないためにその開催を要求することができないことは、利用者の鉄道運賃へのチェック機能を妨げる大きな課題である。
北総鉄道運賃事件東京地裁判決が指摘したように、鉄道事業法は従前の地方鉄道法には存在しなかった目的規定を置き、「利用者の利益の保護」が確保されなければならないことを明示していること、また、鉄道事業法施行規則第73条第3号が「利害関係人」として鉄道利用者等を規定していることに鑑みれば、運輸審議会一般規則第5条第6号に規定する利害関係人についても、利用者が含まれるものと解するのは当然のことである。
したがって、少なくとも居住地から職場や学校等への日々の通勤や通学等の手段として反復継続して日常的に鉄道を利用している者は利害関係人であると認め、運輸審議会一般規則第5条に規定する「利害関係人」に、「当該鉄道を反復継続して日常的に利用する者」を加えるべきである。
2 運輸審議会の委員構成について
国土交通省は、運輸審議会の委員構成について、鉄道利用者の立場を代表する者を新たに加えるべきである。
鉄道旅客運賃認可等を審議する運輸審議会の委員構成については、国土交通省設置法第16条から第18条までにおいて、同委員となる資格や就任するまでの手続き等が述べられているものの、運輸審議会を選任するための具体的な要件は規定されていない。
国土交通省は、国民目線に立った利用者保護と安全で安定的な事業運営の確保の必要性を踏まえ、公平、中立性を備えた運輸審議会委員の人選を行っているとするものの、平成25年11月現在、運輸審議会委員に利用者の立場を代表する者は選出されていない。
鉄道事業法第1条に目的規定を置き、「利用者の利益の保護」が確保されなければならないことを明示していること、同法第16条第1項が、一定の鉄道利用者の利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものであること、さらには、そもそも鉄道運賃が認可制度により決定されるのは、事業者が独占的、恣意的な価格設定を行い、超過利潤を得るのを防止するためであるということに鑑みれば、鉄道旅客運賃審議の場における利用者の立場からの意見表明は不可欠である。
したがって、運輸審議会委員6名のうちの1名を、消費者団体代表などの利用者の立場を代表する者とするべきである。
3 運輸審議会の議事録公開について
運輸審議会は、運輸審議会議事録を誰もが容易にアクセスできる形で公開するべきである。
運輸審議会の議事録はインターネット上のホームページでは一切公表されておらず、また、行政文書開示請求によって公開された「議事録」はいずれも誰の意見、質疑であったのかが不明であるため、具体的にどのような議論が行われたのかうかがい知ることができないものであった。
運輸審議会の議事が非公開であるならば、公聴会において利用者が意見を述べたとしても、その意見がどのように扱われたのか、答申に反映されたのかが明らかにならない。言い換えれば、運輸審議会での公述を単なるセレモニーで終わらせず、意義あるものとするためには、運輸審議会議事録の公開が不可欠なのである。
平成11年4月に閣議決定された「審議会等の整理合理化に関する基本計画」においては、審議会等の委員氏名等の公表はもとより、会議又は議事録も速やかに公表することが原則とされ、インターネット上のホームページへの掲載に努めることとされている。そもそも鉄道事業法1条に定める「利用者の利益の保護」を確保するためには鉄道旅客運賃審議過程への利用者の参画が必要であり、そのためには利用者への情報公開はなくてはならないものである。
したがって、運輸審議会は請求に応じて公開するのではなく、一般のアクセスが可能なインターネット上において、誰の意見、質疑であったのかを明らかにした運輸審議会議事録を公開するべきである。
4 運輸審議会における「軽微な事案」の取り扱いについて
運輸審議会は、「軽微な事案」の認定にあたってはその処分が及ぼす影響を慎重に判断し、審議の省略は最小限にするべきである。
国土交通省設置法及び運輸審議会一般規則は、運輸審議会が個別に認定した場合、または予め定めた認定基準により認めた「軽微な事案」については、国土交通大臣は運輸審議会に諮問することなく処理することができることになっている。
しかし、平成12年以降の運輸審議会の審議答申件数は年間10件程度とピーク時の100分の1近くまで減少していることから、「軽微な事案」として審議省略することの必要性については大きな疑問がある。鉄道運賃認可等の審議過程の情報公開は運輸審議会関係の資料によって行われており、事業者の提出資料等が明らかにされず、認可の判断の透明性、公平性が担保されないこととなる「軽微な事案」としての審議省略を必要最小限に止めるのは当然のことである。京浜急行電鉄羽田空港線の事例のように、多数の利用者に多大な影響を及ぼすと予想される事案について、運輸審議会が「軽微な事案」と認定する際には慎重な判断が必要である。
したがって、運輸審議会一般規則第12条に定める「軽微な事案」の認定にあたってはその処分が及ぼす影響を慎重に判断し、少なくとも大規模鉄道事業者の一部区間運賃認可申請事案については、「軽微な事案」としての専決を止めるべきである。

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