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視察等レポート

0歳児に集中する児童虐待事件とその対策(2014.5)

平成12年に児童虐待防止法が施行されて以来、市町村、医療機関、児童相談所等の関係団体は、児童虐待防止に向けた取組みを行ってきているものの、児童相談所における児童虐待相談対応件数は年々増加し、児童虐待の死亡事例も後を絶ちません。

厚生労働省社会保障審議会による「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第9次)」の報告では、死亡事例をはじめとする児童虐待を防止していくためには、医療機関と母子保健担当部署や児童虐待担当部署が連携し、妊娠期から養育支援を要する家庭の早期把握を行い、早期支援、継続支援が重要であると提言されています。平成17年4月の児童福祉法改正により、各市町村が児童相談の一義的窓口と位置付けられるようになったことからも、市町村の果たすべき役割は大きくなっていますが、児童虐待防止のために必要な母子保健による早期支援、医療機関や児童相談所等との連携が機能していないことが、児童虐待死事例をはじめとする児童虐待事件の増加を招いているのではないかと指摘されるところです。

表1 児童虐待相談の対応件数及び虐待による死亡事例件数の推移

厚生労働省ホームページ「児童虐待相談の対応件数及び虐待による死亡事例件数の推移」

出所:厚生労働省ホームページ「児童虐待相談の対応件数及び虐待による死亡事例件数の推移」


児童虐待対応件数の急増

児童虐待の対応件数は、表1 に示したように、統計を取り始めた平成2年以降増加の一途を辿り、同年度の1,101件から平成24年度の66,701件へと、実に60倍以上の増加となっており、児童虐待によって児が死亡した件数は年間で100件を超えることもあり、高い水準で推移しています。

対応件数が急増した理由としては、第一に社会的な関心が高まり通告件数が増大したこと、次に児童虐待防止法における児童虐待の定義の見直しや通告すべき範囲拡大が行われたことがその理由として考えられます。通告件数を押し上げた要因として、平成16年の児童虐待防止法の改正において、通告義務の対象が「虐待を受けた児童」だけでなく「虐待を受けたと思われる児童」にまで広げられ、児童虐待の定義に「同居人による虐待の放置」が新たに加えられたことが挙げられますが、一方で総務省の意識等調査結果や同省有識者研究会では、児童虐待数自体も増加していると指摘されています。


虐待死事例の4割強が0歳児

全国の児童虐待受理件数は増加の一途を辿っており、平成24年度は前年度より1割以上も増加した6万6千件余りとより深刻なものとなりました。25年8月に厚労省から発表された「第9次子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」によれば、平成23年度の心中以外の虐待死亡事例は56件、58人に上り、年齢別では0歳児が25人(43.1%)、0歳から2歳までを合わせると39人(67.2%)と大部分を占めます。特に「日齢0日」「月齢0か月」といった出産直後の虐待死が目立つところです。また、主たる加害者は「実母」が33人(56.9%)と大変多くなっています。

したがって、児童虐待事例の中でも最も深刻なケースである虐待死事例をなくすためには、妊娠期および新生児期における取組みが重要です。望まない妊娠等により出産直後に殺害あるいは放置により死亡に至らしめる事例は、関係機関の関わりにより子どもの命が助かる可能性があり、妊娠早期からのリスクの高い母子の把握と支援が重要となります。虐待死の防止を図るには、妊娠初期からの妊産婦へのアプローチが不可欠です。


家庭への訪問事業に虐待防止効果~総務省調査

ところで、市町村が実施する乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)は、生後4か月までの全ての乳児のいる家庭を訪問し、子育ての孤立化を防ぐために親の不安や悩みを聞きながら、情報提供および適切なサービス提供を行うことにより、子どもが健やかに育成できる環境整備を図ることを目的としています。一方、養育支援訪問事業は、個々の家庭の抱える、育児ストレス、産後うつ病、育児ノイローゼ等の養育上の諸問題の軽減を図る訪問事業であり、望まない妊娠、若年者の妊娠等で、妊娠を継続することに不安が強い妊産婦等については、出産前から支援を行っています。

平成24年1月の総務省による「児童虐待の防止等に関する政策評価」によれば、平成21年度に乳児家庭全戸訪問事業及び養育支援訪問事業を実施していない訪問事業を実施していない53市町村では、虐待対応件数が減少している団体(13市町村、24.5%)より増加している団体(16市町村、30.2%)が多いのに対し、同年度から両事業を実施した20市町村では、虐待対応件数が増加している団体(6市町村、30.0%)より減少している団体(9市町村、45.0%)が多いことがわかっています。また、平成20年度における同様の調査結果でも、両事業による児童虐待の防止効果が認められているところです。


養育支援訪問事業 県内実施4割

しかし、全国1747市町村(平成23年7月現在)のうち、乳児家庭全戸訪問事業を実施しているところは1613市町村(92.3%)とその割合が高まりつつある一方で、養育支援訪問事業は1098市町村(62.9%)と依然として低い水準です。平成24年11月に千葉県が行った調査では、県内54市町村のうち養育支援訪問事業を「実施している」と回答したのは22市町村と、わずか4割ほどとなっています。さらに、全戸を訪問するとされている乳児家庭全戸訪問事業についても、厚生労働省が訪問率を把握することができた656市町村中81市町村(12.3%)において、訪問率は80%に至っていません。


政策提言 養育支援訪問事業の強化を

養育支援訪問事業は、児童福祉法の規定により、保健師等による具体的な養育に関する指導助言等を行うことで、養育上の諸問題の解決、軽減を図り、安定した妊娠、出産を迎えられるよう支援する事業です。

平成24年1月の総務省行政評価局の「児童虐待の防止等に関する政策評価」をもとに検証した結果、乳児家庭全戸訪問事業及び養育支援訪問事業を導入した市町村で虐待対応件数が減少する傾向が認められ、児童虐待予防策として有効であると指摘されているにも関わらず、全国1747市町村(平成23年7月1日現在)のうち、養育支援訪問事業を実施しているところは1098市町村、わずか62.9%にとどまっています。養育支援訪問事業を全ての市町村において実施し、リスクの高い妊産婦への支援強化を通じて、児童虐待事件の発生予防にあたるべきです。

また、妊産婦訪問指導及び新生児訪問指導は、母子保健法の規定により、健康診査の結果、保健指導を行う必要がある妊産婦、新生児について、当該妊産婦の家庭を訪問し、妊娠、出産、育児等に必要な指導等を行うものです。同指導は市町村が実施主体であるにも関わらず、その個別支援の対象の設定について要領等で対象を定めていなかったり、担当保健師の判断で決めていたりする等の曖昧な対応をしている市町村が少なくありません。また、妊産婦及び新生児の訪問について、常勤保健師以外の多職種等が関わっている事例が少なくなく、担当者間の共通認識と連携、非専門職への母子保健活動についての研修強化が不可欠です。


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